WEDGWOOD Jasperwareのこと
Antique Serendipityにて新しく【WEDGWOOD Jasperware】を紹介していくことにいたしました。
私が専門で学んだのはアンティークのフランスクリスタルなので、あまり幅を広げることはしないつもりでしたが昔から大好きなジャスパーをラインに加えて行きます。
WEDGWOODの歴史などもしっかりとお伝えしていこうと思いますが、今回はジャスパーウェアのアンティークの作品は「ディップドカラー」が多いなぁと感じる部分について作品解説では説明しきれなかったので、こちらでご紹介いたします。
※今回はお客様からのご質問あった内容なので少し長くなります !(^^)!
【ジャスパーウェア】
WEDGWOODの創設者のジョサイア・ウエッジウッドが4年かけて作り上げた炻器(ストーンウェア)にギリシャ神話やローマ神話のレリーフが施された作 品。
〇ディップドカラー
胎土に色素を含ませず、外面を青や緑などの色で覆ったもの。Antique Serendipityにて集めているもののほとんどがそうですが、内側が白くなっており、外側に色が塗られています。
〇ソリッドカラー
胎土に色素を含ませたもの。
近代のジャスパー作品はほとんどがこちらです。素地に色素を混ぜているため内側も素地の色をしています。
アンティークの作品は、先にあげた内側が白いディップドカラーが多く、それがずっと疑問でした。
ディーラーさんに聞くと「ジョサイアが亡くなり、その技法が途絶えたんだよ。」なんて説明を受けました。
それを聞いて、一瞬は「アンティークの作品のみでみられるのね(#^^#)」なんてときめいてしまいました(笑)が…
開発当時は技法が盗まれないように秘密にしていたのは事実です。
しかし、「ディップドカラーの作品の量を考えても、彼が一人でやるわけではなく、窯業とは分業制度であること、そしてジャスパーの試験片を下記のように残し、研究全てを記帳するほど几帳面な彼が後世にその技法を残さないわけがない」と調べることにいたしました。
当時の試験結果をまとめたもの
彼はジャスパーの完成に4年の歳月をかけ1万回に近い試験を繰り返しました。
上図のように様々な色合いを出すことを試みます。
通常、焼き物は焼成すると15~20%収縮します。
ジャスパーの炻器のような素材も同じく焼成時に収縮するのですが、ここで問題が発生します。
それは、地色を出すために加える顔料によって収縮率は異なってしまうということ。その素地に薄いカメオレリーフを合体させて焼くことは困難を極めました。
〇ジャスパーの制作工程
①型やろくろで形を作る
↓
②素地を一日乾かす
↓
③同じ素材でできたレリーフを張り付ける
※レリーフはストーンカメオのように彫ってるのではなく、型で作りそれを張り付ける
↓
④ 焼成
素地とレリーフは同じ素材で作られているため、素地に顔料が入ると、レリーフとの焼成時の収縮率が異なりうまく焼きあがってこないのです。
それを解消するには、素地とレリーフを同じ色合いにして収縮率を合わせて焼くこと。そして、色に関しては「顔料を素地に直接塗る」という工程を加えることにしたのではないかと思います。
そしてできたのがディップドカラー。
工程が増えるので手間がかかりますが、このような理由から当時はディップドカラーの作品が多く作られたのではないかと思います。
今とは異なり、開発後は様々な色のジャスパーが作られていました。
同じ青色でも種類が多く、ムラがでるものはすぐ製造が中止になったとか。
ディップドカラーの工程は手間がかかるものの、電気もない時代の不安定な窯焼きに対応した結果なのかもしれません。
では、現在ソリッドカラーが多いのがなぜか。
今でもディップドカラーの作品は少し作られているようですが、制作する色が決まっているため、生産量は圧倒的にソリッドカラーの作品よりも少ないです。
当時は人件費も安く、手間を惜しむことなく制作するということが好まれた時代ですが、現在の磁器に対する評価は当時とはくらべものになれないほど下がり、ウエッジウッドはテーブルウェアのイメージが強いですよね。
色合いのバリエーションも決まり、電気窯で温度調整が可能になる。顔料も様々な種類が手に入るため、一定の収縮率を把握すると、色を塗るという工程は省かれていってしまったのではないかと推測できます。
窯業を260年も続けることは並大抵なことではなく、その時代にあった物作りを続けないと生き残れません。
彼が生きた時代は世界中の王侯貴族が美術工芸品を愛し、芸術は世の中を動かしていました。
彼の情熱がダイレクトに伝わる時代だからこそ、飛躍を遂げることができました。
創業者のジョサイアは、幼年期より研究に研究を重ねて作品を生み出しています。
ジャスパーのカメオレリーフに関しても彼の研究心は深く、石膏でデザインを起こし、それからジャスパーの素地と同じ素材で制作されます。
先ほど伝えたように、粘土の状態から一度焼くと15%程収縮するので、まずは大きな下絵を作り、必要によって何回にも分けて焼成しながら収縮させベストな方法を採ったようです。
こういった研究の基になったのは、ジョサイアの美術工芸品への憧れが強かったからだと思います。
彼の集大成は【ポーランドの壺】というのはご存知の方も多いですよね。
今日までブランドマークになるほどです。
ジャスパーで作られたポーランドの壺(複製)
Wedgwood museumにて撮影
大英博物館に展示されてるポーランドの壺
古代ローマ時代(西暦25年)にできたガラス製の(本物の)「ポーランドの壺」は大英博物館に展示されています。
ジョサイアはこの壺に憧れ、本物そっくりの複製を作ることを試みて成功するのです。
実は、このローマ時代に作られたポーランドの壺は、過去にある者によって一度壊されています。
その際、ジョサイアが手掛けた「ポーランドの壺」が本物とそっくり同じだったことから、彼の壺を基に修復が行われました。
彼の情熱は後世に伝えられ、実際に一つの芸術品がよみがえっているのです。
ソリッドカラー・ディップドカラー、共にどちらがいいとうわけではなく、どちらも彼の研究の結果として生まれた作品です。
彼が目指した芸術への憧れは、ジャスパーであればレリーフの薄さから感じることができるのではないかな…と私は思っており、Antique Serendipityでは古い時代のジャスパーをご紹介していくことにいたしました。
WEDGWOODのyou tube つけております
https://www.youtube.com/watch?v=VPFK4BqmPoQ
レリーフを彫ってると思ってる方も多いと思うので、こちらもご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=1Vi5mg5iH88
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